全くもって他人事ではないのです。

正社員を雇うと、その社員に払う給料以外にン十万ほど余計にかかるんですよね。物理的に出ていく保険やなんか以外に、教育費だとか、まぁいろいろ。

終身雇用制が生きてる頃は、一人前になったらその分も会社を背負って頑張っておくれ、ってことで、それらはいわば教育投資としてアリの出費だったわけですが、瓦解しちゃったあとはそういう発想も出来にくくなってしまった。

で、企業としては自衛として、より薄給でコキ使え、余分な「ン十万円」も必要ない臨時雇いとしてのバイトにその分の人材補填する流れが出来たわけですが、それをさらに進めた形として、もしかしてそういうバイトメインでルーチン廻すシステム構築したらいちばんおトクなんじゃね?ってことで、コンビニだとか宅配ピザだとかっていう業種は成長してきたわけですね。

スタッフ・社員の成長とかどうでもよくて、とにかくその時々に安くコキ使えるやつを縷々採用して会社を廻そう、ってわけですね。行きつけの喫茶店チェーンなんか、スタッフの9割方がバイトで、あろうことかそんなバイトに「バイトリーダー」とか言って管理職的役割も強いたりさえしてますからね。

その目論みは、企業単位で見るとまぁ大体にして成功し、かくして我々は12個98円の餃子だとか、200g88円のミートソースなんてものに有りつけたりすることが可能になったわけです。上述の喫茶店も、本来管理職社員がするべきことまでバイトに強いたりしてるからこそ、あの値段であのレベルのコーヒーが出せるわけですね。

ただ社会的に見ると、人件費の削減で安価な製品の供給が可能になった反動で、なんだか想像を超えたデフレなども生み出しちゃったりして、こりゃ少々マズいんじゃないか、みたいなレベルにまで来てしまったわけですが、臨時雇いを廻すこと前提でここまで成長してきた各企業は、だからといって今さら引き返すわけにもいかず、さてどうしたもんか、と。

そしたら、その「薄給で便利にコキ使える」だけの存在だったはずの面々が、あろうことか反逆的行為に出たわけですね。

ちゃんとした正社員として、ン十万円の投資も厭わず教育etcを施すことを避けた結果、手痛いシッペ返しを受けてしまった、みたいな形ですね。

考えてみりゃ、無責任な立場の臨時雇いでもって社業そのものを廻し続けよう、なんてムシのいい話がいつまでも通用するわけ無いんですよね。今まで廻せてたってだけでスゴいことですよ。バイトはどこまで行ってもバイトです。冷蔵庫に入ったり食材をオモチャにされたくなかったら、ちゃんとした投資を元にした正社員にやらせなさいよ、その代りそういう人は時給1000円とかじゃ動きませんよ、という。

「シッペ返し」というものは常に予想もしないところから来るものです。ピザ屋もコンビニもステーキ屋も、「薄給で便利にコキ使える臨時雇い」の面々の、安かろう悪かろうっぷりを思い知ったことでしょう。これを機に、安易にバイトに頼らず、ン十万円の出費を厭わず、正社員としての雇用促進に尽力して頂きたいものです。

とか言いつつ、実はオレ及び弊社自身が、こういった安直さの極北だったりするわけです。雇う側としても、雇われる側としても、身に覚えが有ります。有り過ぎる。

かくして、この手の「話題」が出るたび、オレとしてはまるっきり他人事じゃないので、なんとも言えない気分になるのです。