実るほど‥‥‥。

「実るほど こうべを垂れる 稲穂かな」とか言いますがこれはホントです。都知事2期目くらいの頃だったと思うのですが、石原慎太郎の取材撮影に行ったことがありまして、Gパン&シャツ姿で指定の場所に入ったら、当人が先んじて立ち上がり、オレに一礼しましたよ。

「今日はよろしくお願いします(ママ)」

って。

約束の時間の5分前に行ったのですが、そのまた5分前にはもうおられました。もっとちゃんとしたカッコで行きゃよかったと思ったものです。別件収録の最中に飛び込みで入った案件だったのでね。30分弱くらいの収録でしたが、終わった時も「おつかれさまでした。ありがとう」と言われて見送られました。

なにしろ「実るほど……」なんだなぁ、と思うと同時に、巷の噂なんてものはアテにならんのだな、と思いました。痛切に。

でもって、昨年は撮影スタッフとして某区の区長のインタビューを撮りました。

13時からの約束でしたが、秘書だかなんだかの方に促されて区長室に入ったのは13時40分。

で、開口一番、

「 さ っ さ と 済 ま せ て く れ よ 」。

……まぁエラい違いだなぁ、と思ったですよ。痛切に。

こういうことは業界etcに限ったことじゃないのですね。どっかの田舎の蔵の中から「忠次旅日記」のフィルムが出てきて、フイルムセンターだかでの発見記念上映会の際、確か佐藤忠雄だと思うのですが、いち早く会場入りしたら既にパイプ椅子に座ってる先客がいて、誰かと思ったら萬屋錦之介だった、って話もあります。「蒲田行進曲」の銀ちゃんのモデルは錦之介っていうか東映全盛期のにおける錦之助だそうですが、そんな面もありつつ、自身の仕事に対しては殊勝であった、と。

まぁ、ナンですよ、オレもそうありたいと思います。