訃報

阿川弘之の訃報に接して。

いつだかも書いたようにいわゆる「第三の新人」の方々は中~大学時代の私のいわばアイドルで、著者名にそこに属する方の名があれば無条件で買い漁り読み漁りしたものです。今でも我が本棚には「志賀直哉」から「きかんしゃ やえもん」に至るまで揃っております。

氏の著作には妙なところで影響を受けておりまして、「井上成美」の終章、一人暮らしの井上の部屋が加齢臭に満ちていた云々のくだりを読んで、オレはそうならないように今からちゃんとフロに入ろうと決心したり、私流ステーキの焼き方が「鮎の宿」にあるほんの2行ほどの「私的ビフテキレシピ」のくだりそのままだったり。
前者からはホントに老齢の侘しさが滲んでおりましたし、後者のステーキはホントに美味そうだったんですね。ああ、そういうところが「ブンガク」なのかもなぁ、と感心したりしたものです。

氏を「第三の新人」に入れることには是非もある由ですが、なにしろそのメンバーでご存命なのは三浦朱門ご夫妻だけになってしまいました(多分)。27年も経てばそりゃ昭和も遠くなるに決まってますが、いやぁホントに遠くなっちゃったなぁ、と改めて実感する次第です。

遠い遠い昔。

先崎学のエッセイに、なんか重いものを持ち上げた時に思わず「よっこいしょーいち!」と言ってしまって、周囲の若者にポカンとされた、という話がありました。
呆れられたりムッとされたりではなく、なぜ「ポカンとされた」かについて、著者は、彼らが若者であるが故に「横井庄一」を知らないのだ、というところに思い至るのですが、そういや先日小野田寛郎さんの逝去の報も、オレとしては思いのほか扱いが小さいなぁ、と思ったものです。

昭和も遠くなりにけり、時は常に流れ時代は変わるのだ、と改めて思うわけですが、同時に、その時代におけるメインストリームとされる世代が若年化している感じもあります。その時代の中心中核を為す世代というものが、だんだん若くなってる、そんな気がします。
例えば、我が国のありとあらゆるメディアは、20年ほど前と比べてそのターゲットが10歳は若くなってる感じがあります。確かに小野田さんに関する諸々は「昔のこと」ではありますが、それにしてもちょっと扱いが小さすぎやしませんか、と思う。

江戸時代、オトコはみんな前頭部を剃ってチョンマゲ結ってたわけですが、オレが思うにあれはハゲに合わせてるんだよな、と思う次第です。ハゲてない成人男子はみんなハゲてるオッサンに合わせろ、と。

同様に女性も・・・和服着るときって、正式名称は知らないですがなんかタオルとかをお腹部分にグルグル巻きますよね。そうしないと和服ってのはカッコよ
く着こなせないようになってるんですね。これも言ってしまえば中年太りの状態を人工的に作ってるわけで、要するに成人女性はオバさん体型に合わせろ、と
いうことに他ならないんじゃないか、と。

事程左様に、江戸時代までさかのぼるまでもなく、昔は主体がオッサン・オバチャンだったんですよね。
でも、今は間違いなく「若者」です。
FBや、各ポータルサイトの広告などを見ても、オッサンオバチャンに対する、いかに若さを保つか、といった主題のものがやたら目につきます。
まるでオッサンオバチャンであることが恥で悪ででもあるかのように。

私的には、若者であるということには、80%くらい「無知なバカ」であるという意味が含まれてると思うので、こういう様相はオッチャンオバチャン、引いては当の若者のみなさんにとってもあんましトクなことでは無いと思う次第です。

まぁなんのかんの言っても小野田さんに関する諸々が「遠い遠い昔」のことであるのはその通りなんですけどね。小野田さんも、津田信も、関係者のほとんどがもう彼岸の人です。

北杜夫が亡くなった件。

太宰や芥川、漱石、そして北杜夫や遠藤周作や吉行淳之介やいわゆる「第三の新人」の方々は、若き日のオレにとっていわばアイドルで、やみくもに・手当たり次第にその著作を買い捲った りしたものです。丁度嵐やAKBファンにとってのCDやグッズetcと同じ感じです。

でも、例えばAKBのファン(の一部)のように、それを買うこと自体が目的化してたりしたわけではなく、どれもガッツリ、しかも複数回読みまくり・味わいまくりでした。いわゆる「積ん読」は一切ありません。「青春記」なんかはもう何度読み返したかわかりません。

 

時にちょっとどうかと思えるような下ネタや罵詈雑言の類も見られる氏の作品ですが、どれも決して野卑に堕ちることなく、必ず一本筋の通った清廉さがありました。


の理由として氏の育ちの良さを挙げたりする方もいますが、濫読していたオレとしては決してそればかりではなく、やはり多くは氏の技巧に拠るものだったかと
思えます。後天的な研鑽によって得た技巧。そういう事柄も含め、実は非常に「大人」な文章をモノする作家だったと思う。で、パッと見そう思わせないのがス
ゴいところでしてね。

例えば、「幽霊」、「木精」、「航海記」、「青春記」、「医局記」、そして「酔族館」シリーズ、そして「回想記」という順で読み進めてみたりすると、そのあたりの変遷も朧に見えてきます。サンザン読みまくったオレが言うんだから間違いない。

でもって同時に、その順で読み進めた上で改めて「楡家の人びと」を読むと、氏の生きた世界が興味深く見えてきます。

 

もう20年くらい前には既に「オレはもう死ぬ、もうダメだ」とか事有るごとに仰ってた氏ですが、死ぬ死ぬ言いながらなかなか死なない・どころかなんだか妙に元気、というネタだと信じてました。

かなり最近まではその通りだったと思うのですが。

 

とにかく、オッサンになる前に氏の著作に触れることが出来て幸運でした。

ラッシャー。

ラッシャー木村が亡くなってしまいました。

・・・国際プロレスの絶対的エースだったラッシャー木村。

その崩壊後「国際軍団」として新日本プロレスに「殴りこみ」・・・要は新日のブッカーにコマとして買われたわけですが・・・オレは当時、この「猪
木率いる新日=善」vs「国際軍団=悪」という図式にドップリ嵌った小学生でした。

今考えりゃ、この善悪はむしろ逆だよなぁ・・・と、今、動画サイトでもって猪木vs国際軍団3人のハンディキャップマッチを観つつ想う。

こんなに「国際軍団」側にとって悲しい試合は無いよな、と。

引退時、また三沢の逝去時などにも、その姿をついぞ現されることが無かったので、もしかして体調が芳しくないのかしらん、とは思ってたりしたので
すが・・・人の死というものは常に、必ず「突然」なものですな。

今年は確か鶴田が亡くなって十年。

で、来年の一月には馬場の十三回忌。

そして三沢ももういない。剛竜馬の死も去年だったか。

・・・月並みですが、本当に日に日に、リアルに「昭和」の灯が消えていくようです。

ご冥福をお祈り致します。

井上ひさしさん死去=作家・劇作家、「吉里吉里人」など

思い出してみると、初めて買った新潮文庫が「ブンとフン」でした。氏の「処女長編」だそうで、小学4年生時分のワタクシは繰り返し繰り返し読んだもので
す。初めて書いた読書感想文もこれだった気がします。

続いて「ドン松五郎の生活」。これも新潮文庫でしたが、イヌの名前として「ドン松五郎」というのは秀逸というかなんというか。とにかくこれも堪能
致しました。

「天才」と「キ○ガイ」は紙一重とか言いますが、後年はその内包する「キ○ガイ」的な部分が殊更にクローズアップされすぎたきらいがありますね。
そんな気がします。常軌を逸した遅筆っぷりだとか、園遊会への出席だとか、また元妻へのDVの件、これなぞはもはや誰が・なにがホントかウソかわかりませ
ん。「元妻」女史の「暴露本」も読みましたが、「羅生門」状態です。

なにしろ、いわゆる普通人のモノサシで収まる人ではなかったんでしょうね。それは創作者としてありがちなことで、殊更に誹って良い話ではありませ
んん。

「羅生門」っていえば、黒澤明作品への傾倒?についても印象的でした。

確か文春だかで「七人の侍」について”今まで50回観た、あと50回観るまでは死ねない”とおっしゃってましたが、わが意を得たり、ということで、この言い回しは使わせて貰ってます。

つい先日・・・昨日とか一昨日だかに療養中云々の記事が出たばかりです。

こういう死に方をしない人だと、なんとなく、何の根拠も無く思っておりましたので、逝去の報は意外というか、まぁビックリです。

合掌

雑感。そしてまたちょっとだけオグリさんのことも。

いつまで経っても請求書送ってこないので、どうしたのかなぁ、などどノンビリ構えていましたら、別の懇意にしている会社の営業マン氏いわく、目下損害賠償訴訟中でタイヘンなことになってるらしい、とのこと。
なんでも2000マン円ほどの賠償が・・・ってなことになってるらしい。
他人事じゃありません。あそこも我が社同様、それほど大きな会社ではありません。ゆえに2000マンって数字は決して「はした金」ではないはず。
モノを作って納める、という仕事、その納めたものが決定的且つ致命的な欠陥があり、またそれを挽回する時間的・金銭的余裕が無かったら、誰しもそんな憂き目に遭うことになります。
また同時に、世の中には悪い奴も多いので・・・イバラの道のりであります。

マジで!?

なんで!?林由美香が亡くなったばっかりで、今度は橋本も!?そんなバカな!
破壊王は自分以外のナニモノかを破壊し、それによって新たなナニモノかを創造するから「王」なのであって、自分が死んじゃったら…しかも40歳ってのはいくらなんでも早い、早すぎるよ。

ささやかながら追悼する。

こういう肩書きは彼女の場合、誰よりもピッタリなような気もするし、またもっともそぐわないような気もし、いずれにしてもどうにも収まりが悪い心持だったりするのですが、「AV女優」の林由美香さんが先日亡くなられてしまいました。享年35歳。
彼女とは、彼女のAVデビュー前にホンのちょっとだけ接点を持ったことがありましたので、なんというか、他人事とは思えない、というか、100%客観的にこの事実を見据えることが出来ずにいます。