演歌歌手の方の件。

カラオケ大会って言えば、これはほぼ100%演歌なわけですが、演歌歌手でひとつ思い出しました。

ある時、ご当地演歌歌手がデビューするってことで取材したことがありました。24歳男性。年男デビューっていう、だからどうした的なキャッチコピーが付いてました。

ご当人&マネジャー的なスナックのマスターにいろいろお話を伺いました。

まずは現在に至るまでのプロフィール。

・小さい頃から音楽が好きだった

・中学生くらいで、自分でも音楽をやろう、と思い立った

・で、高校生の時にナントカ先生に内弟子入り

・でもって24歳で弟子奉公が明けて、晴れてデビューが許された

音楽こそが我が自己表現の術である、とご当人、厚く語っておられました。

そこでオレは、極めて素朴な疑問をぶつけたわけです。

小さい頃から音楽が好きで、中学高校生になって自分でもやってみようと思い立った際に、選択としてはバンド組んだりギターやったり、となる方が多いと思うのだが、なんでまたアナタは「演歌」だったのでしょう。

演歌の世界を自ら選択した、もしくはご自身にとって演歌でなければならなかった理由というのは、なにかあるのでしょうか、と。

これはホントに単純かつ素朴な疑問で放題で、この世代で、たまただどっかののど自慢でスカウトされたとか、近親者に演歌業界人がいたとかでなく、中高生が自分の意思で演歌界に進むってのはちょっと珍しいかもな、と思ったわけです。

どういうわけでこの目の前の青年は、この珍しい道に自ら飛び込んだのかな、と。

そしたらこの青年、ちょっとの間考えて、やがてスナックの天井をやや見上げて言いました。

“たぶんそういう方と私とでは、最初に教わった先生が違った、ってことなんじゃないでしょうか”

と。

これを聞いた瞬間、ああ、住む世界の違いってあるんだな、と思いました。

あんましロックとかフォークで、センセイのとこに内弟子に入って、数年後に、ああそろそろオマエも年季明けだねぇ、とかいってバンド組むのを許されて、なんてのは無いと思うんですよね。

いや誰かを「師匠と仰いで」「目標にして」ってのはあるんだろうと思いますが、まるっきり徒弟制度で、師匠のお墨付きがあって初めて世に出られる、ってんじゃ無いですよね思うに。

でもこの目の前の青年は、そうは思ってないわけです。どんなジャンルでもそういう道筋だと思ってる。そう信じていささかの疑いも無い。だから考えた挙句に出た答えが上記なわけで。

“ボクも最初に出会ったのがロックやフォークの先生で、最初に通ったのがロックの教室だったら、今ごろロックやフォークをやってるかもしれません”

とも言ってました。

彼にそう思わせしめたのはどういう理由によってのことか、とちょっと興味がわいたんで、根掘り葉掘り聞いてみたかったのですが、取り巻きのオッサンらに止められて取材は打ち切りとなりました。

あんまし余計なことを聞いてくれるな、という空気だったのを覚えてます。

ある意味で純粋培養なこの24歳の青年はいかにして作られたのか、ホントに興味があった。

テレビやなんかを観て、同世代の「アーチスト」がロックやらなんやらやってるのを観てどう思うか、とか、中高生時代の友人やご両親はどう思っておられたのか、とか、いろいろ聞きたかったのですが。

デバカメ的な興味ばかりでなく、さほど世代の違わないオレ自身との対照、という関心もありました。この青年のなにがオレと違ってて、なにが一緒なのか。

この青年もそろそろアラフィフだと思うのですが、どうしてるのかな、と。